バンドルカードの本人確認改善の取り組み

デザイナーの@torimizunoです。

この記事では、バンドルカードでの本人確認改善の取り組みについて、プロジェクトチームの活動の一部をご紹介します。

バンドルカードの本人確認とは

バンドルカードの本人確認
バンドルカードの本人確認

バンドルカードのバーチャルカードは本人確認不要で利用を開始できますが、リアル+カードを発行する場合は利用上限額が上がるため、本人確認手続きが必要になります。 本人確認手続きの詳細はお伝えできないのですが、手続きの一部として、本人確認書類と撮影した本人確認書類と本人情報をご提出いただき、本人であるかの確認を行います。(以降、「本人確認」と呼びます)

確認及び一定の審査が完了すると、カードの発行を行い、お客さまのもとへカードが送られます。 本人確認ができなかった場合は再度申請をお願いすることになり、お客さまのもとへカードが届くのにお時間がかかってしまいます。

本人確認でき発行へ進めたことを承認率と定義し、カスタマーサポートチームが日々状況を計測していました。 2021年5月にこの承認率が過去最低値を記録したことから、改善に注力したプロジェクトが発足し、私はデザイナーとして参加しました。

プロジェクトメンバー
取り組みの流れ
  1. 目的と目標の認識あわせ
  2. 一次情報による原因調査
  3. 課題と仮説立て
  4. イデアから検討
  5. プロトタイピングと実装とリリース
  6. 効果を振り返る
  7. 振り返りから次の打ち手を再検討し実施(2〜6を繰り返し)

目的と目標の認識あわせ

本人確認の承認率には、最初の申請で本人確認ができた初回承認率と、何度か再申請を重ねて本人確認ができた最終的な承認率と、ふたつの定義がありました。

初回の承認率が上がれば、最短でお客さまにリアル+カードが届くことにつながり、その後の承認率向上にもなるため、初回の承認率に的を絞ることを決めました。 過去の最高値を超える値を平均としていくために、過去の最高値を目標値として目指すとしました。

一次情報による原因調査

何が原因でお客さまは本人確認ができなかったのか、住所の間違いや氏名の間違いなど、理由は分類して計測できるしくみが既にできていました。

原因の割合でそれまでも傾向は見ていましたが、プロジェクトメンバーによって一次情報まで確認できている人とそうでない人で課題感の差がありました。 そこでひとりひとりが多角的に課題を知るために、プロジェクトメンバー全員が数百件ずつ申請情報を見に行き、本人確認できなかった理由を抽出していきました。

例えば、本人確認書類の厚みは「表面の厚みや内容が識別できる」を判断基準で真正性を確認していますが、本人確認ができないものとしては下記のような原因が抽出されました。

  • 撮影した書類の全体像が写っていない
  • 書類がぼやけて本人情報が読めない
  • 暗すぎる、反射で本人情報が読めない
  • 厚みが見えない
  • 厚みの角度が急すぎて本人確認情報が見えない
  • 書類の裏面の厚みを撮影してしまっている

本人確認書類の厚みの判断基準
本人確認書類の厚みの判断基準

また、自分たちで一次情報を確認していると「この申請は自分が本人確認ルールに則ってチェックすると承認だと思うけど、非承認になっている」と感じる内容があることにも気が付きました。

課題と仮説立て

本人確認できなかった原因を見ていくと、申請前 申請中 申請後のフローごとの課題と仮説が見えてきました。

フローごとの課題
フローごとの課題

申請前

そもそもの本人確認書類の情報と、住所や氏名等の現在の情報が合っていない場合が見られました。本人確認の趣旨が伝わっていない、住所確認でなく送付先住所と思われている等の仮説があげられそうです。

申請中

書類の撮影が上手くできなかったり、入力する情報を間違えてしまうなどの課題が見受けられました。撮影した書類の情報が他者にとって読み取れる必要があることが伝わっていない、書類の厚みの必要性が伝わっていない、などの仮説があげられそうです。

申請後

本人確認のチェックをしている方たちが、人によって申請内容の承認にぶれがあることが見えてきました。判断に悩む要因を一律本人確認できないとしている可能性がありそうです。

ここから各課題の割合と影響人数を出し、インパクトのシミュレーションを作成し、初回承認率の上昇に影響のある大きさの課題から取り組む優先度を検討していきました。

イデアから検討

課題によって、プロダクト側から申請前・申請中にできるアプローチと、確認オペレーションで申請後に解決できそうなものと両軸が考えられそうなため、平行して検討と実施を進めることにしました。

オペレーションについては カスタマーサポート・不正検知・コンプライアンスのメンバーを中心として、本人確認を実施しているメンバーが判断に迷ったものはプロジェクトメンバーにエスカレーションしてもらう流れを一時的に行いました。 そこでプロジェクトメンバーがチェックを行い、迷う判断基準を言語化し、確認マニュアルに落とし込んでいきます。

プロダクト方面からのアプローチは、Googleスプリントの一部のプロセスを採用し、アイデアだしはクレイジー8を活用しながら実施していきました。

クレイジー8とは

  • 課題解決の参考になる情報を集め案を考える(手書きでOK)…(10分)
  • その時点での案をひとり3分ずつプレゼンする…(3分✕人数)
  • ほかのメンバーのプレゼンを聞いたあと、アイデアを「ひとりで」練り、8つのマスに各1分で書く(8分)
  • 各メンバーのソリューションを匿名で批評・検討し、ベストを決める(20分)

カンムではmeetを利用しているので、ワークショップはMTG中に作成できるホワイトボード機能を利用して実施しました。 私以外のメンバーはクレイジー8をするのは始めてだったのですが、ワークショップ中にどんどんアイデアを書き起こしていってくれて、すごいなと感じました。

クレイジー8で出たアイデア例
クレイジー8で出たアイデア

まずは厚み・生年月日・氏名を取り組むことを決めたので、各課題について毎週のようにアイデアだしを行い、最終的にはどのアイデアが最も初回の本人確認の承認率を上昇させそうかを軸に投票し、ベストなアイデアを絞り込みつつ考慮すべき点もメンバーで洗い出していきました。

プロトタイピングと実装とリリース

イデアを絞り込んだ後は、ひたすらプロトタイプを作成してはチームメンバーで操作してブラッシュアップをしていきました。 例えば申請中の厚みの課題に対して、下記のような施策を実施しました。

①撮影前に注意ポイント画面を挟む 厚みは表面の撮影が必要なこと、厚みと情報が読める必要がある点を伝わりやすくする

撮影前
撮影前

②撮影時のガイドを読みとりやすいものへ 後ろ倒しの斜めから、手前斜め45度のガイドに変更して確認している本人情報が見えやすい角度での撮影を促す

撮影時
撮影時

③撮影後の確認画面の調整 厚み撮影後にチェックする箇所を確認する体験を挟み、注意点に気付けるようにする

撮影後
撮影後

ユーザーに表示される画面が増え完了までその分お時間が発生してしまうのですが、撮影で気をつけるポイントがわからず、撮影が上手くいかず申請後にやり直しが発生するほうがユーザーにとってもサービスにとってもデメリットが大きいと判断し、撮影前と撮影後のガイドを充実させました。 他にも、細やかにライティングの調整等を実施しています。

効果を振り返る

各アイデアを順にリリースしていき、それぞれで効果の振り返りをしていきます。 施策によっては仮説していた想定効果がでないものもあり、新たな仮説を立て直し次の施策へと回していきました。

仮説に対して効果があったものでいえば、例にもあげていた申請中の厚みに対する施策は効果が見られました。 リリース前とリリース後で厚みが原因の割合がどう変化したのか調査したところ、一時期は本人確認できなかった原因の平均4割を占めていましたが、施策以降は最小1割、平均2割以下にさがっていきました。

本人確認できなかった厚みの原因の100%のうち、改善前は「読み取れない&角度が急で読めない」が55%を占めていましたが、施策後は18%になり37%の減少が見られました。 裏面の厚みを撮影してしまう27%を占めていましたが、17%の割合に減少しました。

厚みが原因の内訳の変化
厚みが原因の内訳の変化

振り返りから次の打ち手を再検討し実施

振り返りでの分析で、数年前に申請して久しぶりに再申請を試み、本人確認できないユーザーが半数くらいいることもわかりました。 これに関しては、現状申請時にどの書類で申請したか情報を保存できておらず、一度でも再申請が発生すると、初回のガイドつき申請UIでなくガイドなしUIになってしまっている課題があるため、申請時に書類の情報の取得から順次取り組みをはじめています。

振り返りを重ねながら継続的に施策を実施した結果、2022年1月に初回承認率は目標値を達成し、その後数ヶ月安定して経過しています。

撮影時の厚みの課題以外に、入力時の間違いを減らす施策に関しても施策を繰り返しているため、また別の記事としてお伝えしていきたいです。

今回のプロジェクトから得た学び

実際に申請された情報をひとつひとつチームメンバーが見にいくことで、課題抽出の解像度があがりました。 それがメンバー間での意見活性化や、仮説とアイデアの立てやすさに繋がった感覚があります。 プロジェクトメンバー全員が一次情報をきちんと見ようとした意識で自然と動いていったのは、カンムの「事実と向き合う」文化がにじみ出ているのではないかと思います。

施策によっては効果がなかったものもありますが、実施したことでこの仮説ではない…という事実がわかったトライ自体に価値があるとカンムに来てから感じています。

一度施策を実施した上で再び一次情報を見にいった際、わかった事実を自分が持っているので、今まで見えてなかった観点の課題が見えるようになった時は学びが自分の中に入っている感覚がありました。その感覚が知れたことが嬉しいです。

引き続き、バンドルカードは「誰もがかんたんにわかる」プロダクトとしての品質を高めるアップデートを続けていきます。

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